債務整理すると生命保険の解約返戻金はどうなる?再加入は可能?

PR

生命保険は、いざという時に自分と家族の生活を守るための備えになりますが、掛け金の支払いができなければ強制解約となってしまいますし、債務整理をすることで生命保険に影響が出ることも実際にあります。

債務整理をするためには生命保険の解約が必要になるのか、解約返戻金は没収されてしまうのか、解約したら再加入は可能なのかなど、気になることがたくさんあると思います。

債務整理が生命保険に与える影響などを詳しくご紹介します。


もくじ

債務整理には一定のペナルティがある

債務整理は借金問題を法的手段によって解決するための方法です。

抱えている借金の返済額が減ったり、返済そのものが免責となるので、債務者にとっては生活を再建できる前向きな手段になります。

しかし、いくら生活に困っているからといっても、そう簡単に債務整理が認められてしまっては債権者も納得できません。

銀行や消費者金融などの債権者からすると、法律に基づいて正当な方法でお金を貸したのに、儲けとなる利息が払われないどころか元金すら返済されないこともあるので、会社運営としても大きな問題なのです。

それに、債務整理にペナルティが設けられなければ、借りられるだけお金を借りて、債務整理をして借金をチャラにするというような悪質な手段をとる人が増えることも懸念されます。

債務整理で受ける影響とは?

債務整理の影響としてよく知られているのが、「ブラックリスト」ではないでしょうか。

債務整理をすると、信用情報機関に事故情報が記録されることになります(このことを便宜上ブラックリストと呼んでいます)。

債務整理には「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4種類がありますが、どの方法で債務整理を行なってもブラックリスト入りすることになります。

ブラックリスト入りしている期間は、以下のような制限を受けることになります。

・クレジットカードが作れない
・カードローンや消費者金融などでお金を借りることができない
・住宅ローンやマイカーローンが組めない
・保証人になれないので、子供が奨学金を借りる際に保証人となることができない

この他にも、「自己破産をすると持ち家をはじめとした財産を差し押さえされる」ということも知られていますが、これもある意味本当のことで、持ち家や車は回収・売却されて債権者に分配されることになります。

預貯金、貴金属などは、20万を超える分については差し押さえになります(現金は99万円まで持つことができます)。

債務整理には一定のペナルティがあるのは確かなのですが、生命保険も関係してくるのでしょうか?

生命保険の解約返戻金とは?

生命保険と債務整理の関係の前に、生命保険の「解約返戻金」について確認しておきましょう。

生命保険の解約返戻金は、生命保険を解約した際に払い戻されるお金のことを言います。
生命保険保険に加入している人が自分から解約をした場合や、保険会社の方から契約を解除された場合に払い戻されることになります。

払い戻される金額は保険の内容や加入期間によって異なりますが、長く加入しているほど返戻率は高くなります。

なお、解約返戻金が発生するということは、生命保険が解約された状態ということになりますので、万が一のことがあっても保険金や給付金が支払われることはありませんのでご注意ください。

債務整理をしたら生命保険を解約しないといけないの?

債務整理には4つの種類があるとご紹介しましたが、どの方法を選択するのかによって解約返戻金への影響は変わってきます。

債務整理の種類ごとに、生命保険解約の必要性と解約返戻金はどうなってしまうのかをご紹介します。

任意整理と生命保険の解約返戻金について

任意整理は、これから発生する利息(将来利息)をカットして返済負担を減らし、完済を目指せるように債権者に交渉する債務整理になります。

裁判所の関与はありませんので、一般的には弁護士・司法書士に依頼して債権者と和解交渉を行うことになります。

任意整理では、解約返戻金があったとしても生命保険の解約を求められることはありません。

任意整理においては、そもそも債務者の財産の有無が債権者に問われることはありません。
もちろん、返済に回せる余力があれば返済した方が良いですが、たとえ貯金があったとしても任意整理をすることは可能なのです。

また、消費者金融などの金融機関は、利用者が生命保険に加入しているかどうかを調べる方法がありません。

こういった理由から、生命保険に加入したまま任意整理を行うことは可能となっています。

特定調停と生命保険の解約返戻金について

特定調停は簡易裁判所を介して借金の減額と支払い期間の調整を行う債務整理の方法になります。

特定調停の特徴は、弁護士・司法書士などに依頼をせず、債務者本人が裁判所に申し立てを行うことです。

債権者との和解は、裁判官と裁判所から選任される調停委員が行います。

減額できる金額は任意整理と似ていて、多くの場合は利息のカットになります。

特定調停では裁判所に提出する必要書類の中に、以下を含める必要があります。

・生命保険などの加入の有無
・生命保険の加入名義
・保険会社
・現時点で保険を解約した場合の返戻金

生命保険に加入した状態で債務整理の手続きを進めることは可能なのですが、提出している書類から加入状況も解約返戻金も裁判所にわかることになります。

そのため、
「生命保険を解約すれば返済額をもう少し増やせるのでは?」
「生命保険に加入したままでは、債権者から和解を得るのは難しいですよ?」
などと言われることになってしまいます。

特定調停は他の債務整理方法と比較すると積極的に選択されるものではありませんが、生命保険に加入した状態では裁判所に認められにくいと思っておいた方が良いでしょう。

※特定調停の必要書類は、申し立てを行う地域の簡易裁判所によって異なります。
必ず、お住いの地域の簡易裁判所で確認をしてください。

個人再生と生命保険の解約返戻金について

個人再生は、裁判所を通して借金の額を5分の1から10分の1まで減額してもらう債務整理方法で、減額された残債は3年~5年かけて返済していくことになります。

例えば借金の金額が600万円ある場合、個人再生が認められれば弁済額は120万円になります。

600万円を5年で返済しないといけないとなると毎月の返済額は10万円になってしまい返済負担はかなり大きいのですが、120万円に減額できれば毎月2万円の返済で良くなりますので、完済の目処も見えてきます。

個人再生では財産を処分する必要がありませんので、生命保険の解約をしなくても手続きを進めることは可能となります。

ただし、個人再生では「清算価値保証の原則」という決まりがあり、現在保有している財産の額以上の金額は返済しないといけないことになっています。

ここで言う財産には生命保険の解約返戻金も含まれることになります。

そのため、長年生命保険に加入していて解約返戻金の金額が大きい場合は、弁済額が大きくなる場合があります。

例1)借金が500万円あり、財産となる預金などが何もない場合
個人再生が認められれば弁済額は5分の1の100万円になります。

例2)借金が500万円あり、生命保険の解約返戻金が200万円ある場合
清算価値保証の原則により、最低200万円の弁済を求められることになります。

借金の額が同じでも、所有財産によって減額できる額が変わるが個人再生の非常に大きな特徴となるわけです。

少なくとも債務者の財産以上の金額が返済されることになるので、債権者も個人再生に納得しやすくなるのです。

個人再生では生命保険の解約返戻金があっても解約をする必要はないのですが、解約返戻金が多い(財産が多い)と弁済額も多くなります。

そのため個人再生後の返済が苦しくなったり、生命保険の支払いが生活を圧迫するようになったら解約しなければいけない可能性は残ります。

自己破産と生命保険の解約返戻金について

自己破産は、裁判所によって認められれば借金の返済が0円になる債務整理です。

自己破産は4種類の債務整理の中で唯一借金をチャラにできる方法になるのですが、その代わりとして家や車を残すことはできませんし、20万円を超える財産も処分の対象になります。

解約返戻金がある生命保険も財産に含まれるので、解約返戻金が20万円を超える場合は解約しなければいけません。

しかし、いくら解約返戻金が財産とみなされるのは仕方がないとはいえ、これまで長く加入してきた保険としての役割は残しておきたいと思うものです。

20万円を超える解約返戻金の支払いは免れられないとしても、生命保険の契約を残しておくことはできないのでしょうか?

自己破産で生命保険の解約を避ける方法とは?

自己破産を行って、解約返戻金が20万円を超える場合は、原則として生命保険を解約しなければいけませんが、専門家に相談をした上で、以下のような対策をとれば解約しないで済むことがあります。

1.「自由財産の拡張」を認めてもらう

必要最低限の財産を奪うことは、債務者の生活の立て直しを妨げることになります。

そのため自己破産をする場合でも、99万円を超えない現金は残すことができますし、生活に必要な身の回りの品物も処分されることはありません。

こういった財産は「自由財産」と呼ばれています。

生命保険の解約返戻金は、そもそも自由財産には入りませんが、「自由財産の拡張」を行なって20万円を超えない解約返戻金を残すことが裁判所から認められれば、生命保険の契約を継続できることもあります。

2.契約者貸付制度であえてお金を借りる

解約返戻金がある生命保険では、「契約者貸付制度(解約返戻金の一部を借りられる制度)」を利用することができます。

契約者貸付制度でお金を借りて解約返戻金を20万円以下に抑えれば、強制解約の対象にはなりません。

自由財産として認められるので、生命保険の契約も継続することができますが、借りたお金は返済しなければいけませんし、お金の使い道は必ず確認されることになります。

資金使途が曖昧であったりギャンブルや浪費である場合は当然認められませんし、お金の使い道によっては免責不許可事由となってしまうこともあります。

※生命保険の契約者貸付制度について詳しくは生命保険 契約者貸付制度でお金借りる方法【解約返戻金があるので低金利】をご覧ください。

3.「保険法の介入権制度」を検討する

自己破産では生命保険の解約返戻金に目がいきがちですが、そもそもの生命保険の役割は将来や日常生活におけるお金の不安に日頃から備えておくためのものです。

しかし、債務者の年齢や健康状態によっては自己破産のために生命保険を解約してしまうと、再加入が非常に難しいことがあります。

こういったケースでは保険金受取人の利益を守るために、解約返戻金相当額を負担することで契約を続行できるようにした「保険法の介入権制度」を利用できることがあります。

▼保険法 第89条「契約当事者以外の者による解除の効力等」

差押債権者、破産管財人その他の傷害疾病定額保険契約(第九十二条に規定する保険料積立金があるものに限る。以下この条から第九十一条までにおいて同じ。)の当事者以外の者で当該傷害疾病定額保険契約の解除をすることができるもの(次項及び同条において「解除権者」という。)がする当該解除は、保険者がその通知を受けた時から一箇月を経過した日に、その効力を生ずる。

2:保険金受取人(前項に規定する通知の時において、保険契約者である者を除き、保険契約者若しくは被保険者の親族又は被保険者である者に限る。次項及び次条において「介入権者」という。)が、保険契約者の同意を得て、前項の期間が経過するまでの間に、当該通知の日に当該傷害疾病定額保険契約の解除の効力が生じたとすれば保険者が解除権者に対して支払うべき金額を解除権者に対して支払い、かつ、保険者に対してその旨の通知をしたときは、同項に規定する解除は、その効力を生じない。


第一項に規定する解除の意思表示が差押えの手続又は保険契約者の破産手続、再生手続若しくは更生手続においてされたものである場合において、介入権者が前項の規定による支払及びその旨の通知をしたときは、当該差押えの手続、破産手続、再生手続又は更生手続との関係においては、保険者が当該解除により支払うべき金銭の支払をしたものとみなす。

引用元:e-Gov「保険法」

上記を簡単に言うと、解除権者が生命保険の契約を解除しようとした際に、保険金受取人が「保険会社が解除通知を受けたときから1か月を経過するまでの間」に解約返戻金相当額を支払えば、保険契約を存続させることができるということになります。

ただし、介入権を行使できるのは「被保険者」または「契約者・被保険者の親族」となるので契約者本人が介入権者になることはできません。

4.解約返戻金の相当額を破産財団に支払う

自己破産で生命保険の解約となるのは、解約返戻金が20万円を超えるケースになります。

解約返戻金が処分しなければいけない財産になってしまうことから、保険契約も解約して支払いをする必要があるんです。

回収された解約返戻金はどうなるのかというと、破産財団に支払われてお金を借りている債権者に分配されることになります。

そこで、あらかじめ破産財団に解約返戻金相当額を支払っておくことで、生命保険の解約を避けるという方法もあります。

なお、この方法は裁判所から選任される破産管財人との交渉が必要になります。

ブラックリストになっても生命保険に再加入することは可能

個人再生や自己破産によって生命保険を解約せざるを得なくなった場合に、「ブラックリスト状態だと、生命保険に再び入ることはできないのでは?」と言われることがあります。

これは結論から言うと、全く問題なく再加入することができます。

保険会社には加入希望者がブラックリスト入りしているかどうかを調査する方法がありません。

信用情報機関に加盟している保険会社もあるのですが、保険業務で加入者の調査をするために信用情報機関に照会をかけることはありません。

そもそも生命保険は融資とは全く異なりますので、審査基準となるのは健康状態や職業(危険な職業でリスクが高い場合は加入できない保険もあります)などであり、返済能力を調査されることはありません。

万が一支払いができなくなれば強制解約となるだけなので、加入希望者にどれくらい支払い能力があるかどうかは問われないのです。

そのため債務整理をしている最中でも、自己破産をした直後でも、生命保険に再加入することは可能です。

【まとめ】債務整理と生命保険・解約返戻金

債務整理をしても生命保険の契約を残す方法はあります。

債務整理をした場合の生命保険の解約返戻金についてまとめると以下のようになります。

・任意整理では生命保険を解約する必要はない
・特定調停では和解交渉のために解約を求められることがある
・個人再生では生命保険の解約は不要だけど、解約返戻金が多いと弁済額が多く残ることがある
・自己破産では解約返戻金が20万円を超える場合は原則として解約が必要。ただし、生命保険の解約を免除できる方法もある
・債務整理によって生命保険を解約しても、再加入することは可能。ブラックリストでも全く問題ありません。

債務整理後の返済と生命保険の掛け金の支払いは両立できる?

自己破産では返済が残ることはありませんが、それ以外の債務整理では必ず返済を継続することになります。

また債務整理後も生命保険の加入を継続したい場合は、当然ですがそれなりの支払いが必要になります。

もちろん保険は大切ですが、支払いに不安を抱えながら貯蓄型の生命保険に入るというのは債務整理後の生活の再建の妨げになるケースもあります。

これは任意整理などで生命保険の解約をしないまま払い続ける場合も同じです。

いくら万が一の時には安心できるとはいえ、借金返済を続けながら生命保険を継続するのは借金で掛け金を払っているのと同じで、貯蓄型の生命保険に支払えるお金があるなら借金返済を急いだ方が良いでしょう。

長く払い込んできた生命保険を債務整理によって解約しなければいけないのは非常に残念な思いですが、生活の再建を優先すべき時もあります。

解約返戻金が支払われるタイプの積み立て型の保険は掛け金も高くなりがちなので、一定期間は掛け捨て型の保険に加入するなど柔軟に検討してみると良いでしょう。

なお、弁護士・司法書士などの債務整理の専門家は、こういった細かな相談にものってくれます。

生命保険契約を維持した状態で債務整理をしたい場合も、早めに専門家に相談すると良いでしょう。


 

▼「債務整理」に強い専門家と、「闇金対策」に強い専門家を紹介していますで、以下のボタンからランキングをご覧ください(※すべて対応区域は全国)。

 
   

PAGETOP