債務整理すると退職金はどうなる?回収される?

退職金は、これまで一生懸命働いてきた人にとっての大きなご褒美のようなものですし、定年退職でまとまったお金が入ってくる場合は、住宅ローンの繰上げ返済を考えることもあるものです。

今まで頑張って働いてきたからこそもらえるはずの退職金ですが、債務整理をしてしまうと財産とみなされて回収されてしまうのでしょうか?

また今後の生活を考えると、債務整理をせずに早期退職をして退職金で一括返済した方が良いことなのでしょうか?

なかなか人には聞きにくい債務整理と退職金について解説いたします。


もくじ

退職金は退職をすることで受け取れるお金

そもそも退職金は、勤めてきた会社を辞めることで受け取ることができるお金です。

しかし、債務整理についてすでに調べたことがある人ならば、「自己破産をすると退職金も財産として没収される」と聞いたこともあるのではないでしょうか。

たとえ退職金をもらっていない状態でも回収されてしまうケースがあることを不思議に感じるかもしれません。

債務整理をすると退職金は回収されてしまうのか?

債務整理には任意整理特定調停個人再生自己破産の4つの方法があるのですが、どのやり方を選ぶのかで退職金の扱いは変わってくることになります。

ここでは債務整理の種類ごとに退職金がどうなっていくのかをご紹介します。

任意整理では退職金の回収はない

任意整理は、裁判所を介さずに債権者との話し合いによって借金を減額する和解を進める手続きになり、一般的には利息を全額カットしてもらって、残った債務を3年(場合によっては5年)で返済していくことになります。

任意整理は弁護士・司法書士などの専門家に依頼して行うのですが、裁判所は介さずに債権者と直接交渉をすることで和解を目指します。

任意整理は裁判所の関与がないことから、退職金を含む財産の差し押さえは行われませんが、債権者に和解の条件を納得してもらう材料として、受け取り予定と見込まれる退職金を財源として和解案を計画することもあります。

特定調停も退職金を没収されない

特定調停は、債務者と債権者の話し合いを裁判所が仲裁して和解成立を進める債務整理で、減額される金額は任意整理と同様に利息のカットとなるのが一般的なので、大幅な債務の軽減は望めません。

ただ、特定調停は弁護士・司法書士などの専門家に依頼せずに債務者が自分で行うことが可能なので、費用が安く済むというメリットがあります。

特定調停も退職金の差し押さえはありません

個人再生では退職金も財産として扱われる

個人再生は、抱えている債務を原則5分の1程度に減らしてもらう手続きで、残った債務は3年~5年かけて返済していくことになります。

借金をゼロにすることはできませんが、住宅ローン特則によって住宅ローンを除いた借金を整理することができます。

そのため、個人再生は借金の額が多く任意整理ではどうにもならないけど持ち家は残したいという場合にも利用されます。

個人再生には「清算価値保障」がある

個人再生では、自分が持っている財産を売却して処分した際の価値分は返済しなければいけないというルールがあり、これを「清算価値保障」と呼んでいます。

清算価値には現金、預貯金、不動産、高価な美術品、自動車などがあるのですが、受け取り予定である「退職金見込額」も財産として扱われます

退職金をまだ受け取っていない場合も財産に含まれる

例えば債務が1000万円の人が個人再生を行う場合、財産が何も無いなら返済額を5分1の200万円までおさえることができますが、300万円の価値がある財産がある場合は、清算価値保障により300万円までしか減額となりません。

財産の価値の合計が1000万円を超えるのであれば、個人再生を行なっても減額されることはないということになるんです。

このように、個人再生では退職金の金額(財産の額)によって、減額される金額が変動することになります。

ただし退職金の見込額全額が対象になるわけではない

しかし、退職金を受け取ることができる「予定」と言っても、予定は予定ですので実際いくらになるのかはわかりません。

実際に受け取る時には減っていることも考えられます。

そこで退職金見込額は、以下のように扱われることになります。

▼退職金の清算価値の割合

個人再生が認可されたタイミング 清算価値の割合
退職金を受け取った後 退職金全額
退職予定がある、または退職したけど退職金を受け取る前 退職金の4分の1
退職予定がない 退職金見込み額の8分の1

 

退職金を受け取った後は貯金などと同じような財産として扱われ、全額が清算価値になるので、金額が高ければ個人再生を行なっても支払う金額も増えてしまいます。

退職予定がある人と、すでに退職したけど退職金を受け取っていないという状態であれば、退職金の「4分の1」が財産とみなされます。

まだ退職予定がないという場合は、退職金の「8分の1」が財産とみなされることになります。

つまり今現在もらえる退職金が160万円以上ある場合は、少なくとも20万円以上の財産として扱われることになります。

まだ退職金が出るほど勤続年数を重ねていない若い方は気にしなくても良いのですが、定年退職が近い人や、退職金がもらえることが確定している場合は、その見込額も非常に重要になってきます。

退職金をすでにもらっている場合は全額が財産にみなされる

退職金をすでに受け取っている場合は現金・預貯金として扱われるので、20万円以上あれば財産とみなされます。

元は退職金でも受け取った後であれば、個人の現金・預貯金となるので、持っている金額がそのままの価値で「現金」という財産として扱われることになります。

自己破産も退職金が財産として扱われる

自己破産をすると「評価額(価値)が20万円以上の財産」は没収の対象となります。

例えば、不動産、車、貴金属、高額な腕時計などは20万円以上の価値があれば差し押さえの対象となり、現金も差し押さえられます。

受け取り前なら「退職金見込額」が財産とみなされる

退職金を受け取る前であれば、自己破産も個人再生と同様に「退職金見込額」の一部が財産として扱われることになります。

退職予定がある人と、退職済みで退職金をまだ受け取っていない人は退職金の「4分の1」、退職予定がない人は退職金の「8分の1」が財産とみなされることになります。

この方法で計算した退職金の金額で20万円を超えた分は、差し押さえの対象になります。

退職金をすでにもらっている場合は財産になる

退職金をすでにもらっていて、現金で手元に残してあれば現金になりますし、銀行口座にあるのであれば預貯金となるので全額が財産として扱われます。

元は退職金であってもすでに個人の財産なので、20万円以上の退職金は回収されてしまうのです。

ただし、自己破産の場合は99万円以下の金銭(現金)であれば自由財産として残すことができます。

「退職金見込額」はどうやって計算するの?

「債務整理をしないといけないくらいだから財産なんてあるはずもないじゃない・・・」と思っていたかもしれませんが、これから受け取るはずの退職金は財産として試算しなければいけません。

個人再生・自己破産では、受け取り前の退職金も「4分の1」または「8分の1」が財産になるというお話をしてきましたが、将来受け取る退職金の計算なんて自分でできるのでしょうか?

1.会社に退職金証明書を発行してもらう

退職金見込額を知る方法は2通りあり、ひとつは「退職金証明書」を利用する方法です。

勤めている会社にお願いして、現時点で退職したら退職金はいくらになるのかを「退職金証明書」という形で発行してもらうことができます。

また、個人再生・自己破産をする際は退職金証明書を必要書類として提出しなければいけません。

退職金証明書があれば自分で計算をする必要がないのですが、会社に依頼した時に「何に使うの?」と用途を確認される可能性はあります。

会社は債務整理をすることを理由に社員を解雇することはできませんので、「自己破産の提出資料に使います」と言っても良いのですが、実際はできるだけ隠しておきたいものです。

退職金証明書は住宅ローンを組むときにも必要になることがある書類なので、「住宅ローンを検討しているので、一応用意しておきたい」と言うのが自然かと思います。

勤務先に債務整理をすることを申告する必要はありませんので、上手な理由を考えておきましょう。

2.退職金を自分で計算する

退職金が出る職場では会社ごとに就業規則に退職金についての記載があります。

この退職金の規定に書かれている内容にそって、自分の勤続年数や役職などを当てはめて計算した「計算書」と、就業規則の「退職金について書かれている部分(退職金規定)」のコピーを裁判所に提出する方法でも大丈夫です。

公務員の方など、債務整理をすることが職場に絶対にバレたくないという方はこちらの方法が向いていると言えるでしょう。

個人再生・自己破産をしたら退職しないといけないの?

退職金も見越して債務整理(個人再生・自己破産)を行なった場合、債務整理手続きが終了したら実際に退職しないといけないのかというと、そんなことはありません。

「退職金見込額」はあくまでも今退職金を貰えるとしたらいくらになる?という仮計算になるので、退職をする必要はないんです。

生活再建のためにまずは今のお仕事を頑張りましょう

個人再生は、手続きが完了してからも3年~5年は返済が続くことになります。

退職することは考えずに、これまで通り安定した仕事を続けて早期完済を目指すべきでしょう。

自己破産は「すべての終わり」という印象がある方もいらっしゃるかもしれませんが、破産手続きが開始された後のお給料は没収されることはありません。

自己破産によって借金がゼロになった状態で、お給料はこれまでと変わらず入ってくるわけなので、デメリットも大きいもののメリットも非常に大きい債務整理になります。

いずれの場合も退職はせずに、むしろこれまで以上にお仕事に励むことで、より早く債務整理後の生活を整えることができます。

債務整理をせずに早期退職で借金を返済した方が良いの?

定年退職が近い年代の方の場合、債務整理をせずに早期退職して退職金で借金を返した方が良いのかとお考えの方もいらっしゃると思います。

退職金で借金を一括返済できれば、確かに債務からは解放されてスッキリできますが、借金の金額によっては職を辞した後に始まる第二の人生に不安を覚えるのではないでしょうか。

退職金を借金返済に充てないといけないということは十分な蓄えは無いという状況でしょう。

そういったケースでは、退職金を使ってしまってまで全額返済をするよりも、任意整理などで退職金は手元に残しつつ借金を減らす債務整理を行なった方が良い場合もあります。

再び借金生活に戻る可能性も出てくる

一括で返済してしまうことで今後の生活費が苦しくなり、再び借金してしまうことも考えられます。

いまままでも返済が苦しかったかと思いますが、年金生活になってからの借金返済は今までよりもさらに厳しくなります。

退職金を受け取らずに債務整理をした方が良い時もある

少なくとも退職金を受け取ってから個人再生・自己破産をしてしまうと、全額が財産として扱われることになります。

また、個人再生では持っている財産が重要になるので、個人再生認可が下りるまでは退職金を受け取らないほうが良いケースもあります。

退職金というまとまったお金が入ってくるからこそ返済に回した方が良いのか、それとも現金はできるだけ手元に残して債務整理を行うべきなのか、どうするのがいちばん良い方法なのかは誰しも判断がつきにくいものです。

「借りたお金はきちんと返済しないといけない」と真面目に考えてしまうかもしれませんが、早期退職を実行する前にまずは弁護士など専門家に相談することを強くおすすめします。

【まとめ】退職金を少しでも残したいなら専門家にご相談を

「債務整理と退職金」についてまとめるとこうなります。

・任意整理、特定調停では、退職金の差し押さえはありませんが、債権者との和解交渉をスムーズに進めるために、受け取り予定と見込まれる退職金も返済に充てることを提案することはあります。

・すでに退職金を受け取っていて個人再生をする場合、退職金の額によって減額される金額に違いが出てきます。

・すでに退職金を受け取っていて自己破産をする場合、退職金全額が財産として扱われます。

・個人再生と自己破産で、まだ退職金を受け取っていない場合は、4分の1または8分の1が20万円を超えた分は差し押さえの対象になります。

・退職金の額は会社から退職金証明書をもらうか、就業規則から自分で計算して裁判所に提出することになります。

・退職時期が近い場合は、早期退職や退職金での一括返済を実行する前に弁護士・司法書士に相談してみた方が良い。

・退職金を受け取る前に債務整理を実行した方が良いこともある。

当たり前ですが退職金は大事に使おう!

退職金はこれまで何年も、何十年も同じ職場で働いてきた自分へのご褒美ですので、ぜひ満額受け取って、好きなことに使いたいものです。

借りたお金を退職金で一括返済しようとする心構えは立派だと思いますが、債務整理を行うことで大切な退職金はある程度手元に残しつつ、借金の額を減らすことができます。

退職金が気になるくらいの年齢の方になると、債務整理が会社にバレたら・・・とか、近所の目もあるし・・・などの心配事も多いかと思います。

しかし、債務整理は親戚や会社の人、ご近所に内緒で行うことが可能なので、社会的な信用を失うなどの心配はいりません。
こういった心配も、退職金をできるだけ残したいという希望も、すべて専門家(弁護士・司法書士)に相談してみてください。

可能であれば退職金をもらう前、さらに言うと退職予定を組むよりも前に、なるべく早く相談するようにしてください。

債務整理の相談は無料で受け付けている弁護士も多いので、ご自身の状況を話してみましょう。

退職金をできるだけ残したいという相談にももちろん乗ってもらえますし、相談者ひとりひとりに合わせた最適な債務整理方法を提案してもらうことができます。

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