債務整理すると賃貸契約ができなくなる?引越できない?
最初にお伝えしておきますと、債務整理をしても賃貸契約や引越しをすることもできますし、「自己破産したら賃貸契約ができない」などの法的な根拠もありませんが、債務整理を行うことで賃貸物件の入居審査に落ちてしまうことは実際にあります。
ここでは債務整理と賃貸契約、入居審査の仕組みなや、注意点などをご紹介します。
賃貸契約と債務整理には直接的な関係はない
まず、賃貸物件を契約することと債務整理を行うことは、本来関係がないということを確認しておきましょう。
不動産会社も大家さんも借主がブラックリスト入りしているかどうかを調べることはできません。
また、住人が債務整理をしたとしても、そのことを理由に更新を拒否したり追い出すことはできません。
債務整理をするとブラックリスト入りする
債務整理には任意整理・特定調停・個人再生・自己破産の4種類あるのですが、どの方法で借金を整理しても必ずブラックリストに載ってしまいますが、これを避けることはできません。
ブラックリスト登録期間は任意整理と特定調停が最長5年、個人再生と自己破産が最長5年~10年になります。
ブラックリストに載っている間は、カードローンなどでお金を借りられなくなりますし、住宅ローン、自動車ローンなども利用できません。
また、クレジットカードを作ることもできませんし、すでに持っているカードも使えなくなってしまいます。
「そんなにいろいろな制限がかかるのであれば家も借りられなくなるのでは?」と思えてきますが、そんなことはありません。
ブラックリスト入りしていても家を借りられる理由を順を追って解説します。
入居審査には種類がある
賃貸物件を借りるときに、「連帯保証人を用意してください」と言われたことがある方は多いと思いますが、近年では「保証会社との契約が必須になります」と言われることもあります。
連帯保証人を用意するのが一般的でした
連帯保証人は入居者が家賃を滞納した際に代理で支払いを行うことになる人です。
連帯保証人は入居者の両親など保護者が担うのが一般的ですが、近年では身内や親族を連帯保証人とするケースが減っています。
保証人となる方々の高齢化が進んでいて年金受給者となっていることや、子供が単身上京していて親が遠方に住んでいる、そもそも連帯保証人として頼れる人がいないなど、様々な背景から連帯保証人を利用しない賃貸契約が増えているんです。
賃貸債務保証会社を利用するケースが増えている
賃貸物件のオーナーは家賃収入で生活をしていますし、その物件の修繕なども家賃から払わなければいけません。
連帯保証人がいれば万が一家賃が滞ったときでも連帯保証人に請求ができるのですが、前述のように近年では連帯保証人をつけないケースが増えています。
この連帯保証人の代わりに急増しているのが賃貸債務保証会社(賃貸保証会社)の利用です。
平成28年の国土交通省の調査によると連帯保証人のみを利用した賃貸契約は41%で、家賃債務保証会社を利用した契約は約56%でした。
すでに連帯保証人を利用した賃貸契約件数を上回っているんです。
<参考>:家賃債務保証の情報提供等に関する検討会 参考資料 -国土交通省-
賃貸保証会社の働き
賃貸保証会社には主に2つの働きがあり、ひとつは、その名のとおり賃貸契約に関する保証です。
入居者が家賃を一定期間滞納した場合、保証会社は一旦支払いの立て替えを行って大家さんに支払いをします。
これらの手続きが行われたら、今度は保証会社が入居者に請求をして債権回収を行う流れになります。
強制退去となった場合や訴訟を起こす場合などの手続きも保証会社が対応します。
もうひとつの働きは入居審査です。
保証会社は万が一のときに立て替えを行なったり、債権回収などの面倒な対応を行わなければいけません。
そこで、あらかじめ「この人は延滞しそうだな」と思える人を審査の段階でチェックするというお仕事も行なっているんです。
不動産会社と大家さんは、その人が家賃を払えるかどうかを審査しますが、それはあくまでも安定した収入があるかどうかなど入居者の申告に基づくものです。
一方、賃貸保証会社は信用情報機関に照会をかけてブラックリストになっていないか、クレジットカードを使いすぎていないか、ローンの支払いを滞納していないかなどを厳しくチェックします。
管理会社は信用情報を調べることはできない
ここは非常に重要な部分になります。
債務整理をするとブラックリストに登録されてしまうのですが、登録期間は任意整理と特定調停が最長5年、個人再生と自己破産が最長5年~10年になります。
家を借りるときに直接的にお世話になるのは大家さんではなく、不動産会社・管理会社・仲介業者などであるケースが多いです。
これらの業者は、原則として個人信用情報を閲覧することができません。
そのため、連帯保証人をつける従来型の契約では、たとえブラックリスト入りしていたとても、そのことを自分から言わなければ知られることなく賃貸契約をすることができるんです。
保証会社の中には信用情報を閲覧できるところもある
一方、賃貸保証会社は信用情報をチェックすることができます。
賃貸保証会社の中には、クレジットカードの発行を行なっている信販会社が保証業務を行なっているケースがあります。
こういった場合は、保証会社が個人の信用情報を閲覧できるので、入居審査に際にブラックリスト入りしていることがバレてしまうことになるんです。
・連帯保証人をつける賃貸契約 → ブラックリスト入りしていてもバレないので契約できる
・賃貸保証会社をつける賃貸契約→ ブラックリスト入りしていることがバレるので契約できない
債務整理をしたことで入居審査に落ちる・賃貸契約ができないケースとは?
債務整理が直接の原因となって賃貸契約に影響するということはありません。
賃貸契約中に自己破産をしたとしても、そのことを理由にマンションを追い出されるなどの強制退去を求められることもありません。
また、不動産会社が信用情報を閲覧することもありません。
ただし、債務整理をしたことが間接的に賃貸契約に影響してくるケースもあります。
どういったときに債務整理が賃貸契約に関わってくるのかをご紹介します。
賃貸保証会社が信販系である場合
賃貸保証会社の中には信販系と呼ばれる保証会社があります。
・ジャックス
・オリエントコーポレーション
・アプラス
・セディナ
・エポスカード
・ライフカード
など
これらの保証会社はいずれも CIC という信用情報機関に加盟していて、入居審査の際に個人信用情報をチェックします。
そのため、債務整理をしたことやブラックリスト入りしていることは信用情報機関に照会をかけることでわかってしまうので、信販会社が保証会社を担っている物件の入居審査には通ることができません。
なお、信販会社以外にも全保連、日本賃貸保証(JID)などの保証会社もありますが、これらは信用情報の閲覧は行いません。
保証会社との契約が必要と言われたら、どの会社との契約が必要なのかも確認しておきましょう。
過去に自己破産をして家賃を踏み倒したことがある場合
自己破産をしたことが直接の原因となって賃貸物件の契約ができないということはありませんが、自己破産をして家賃の踏み倒しを行なった場合は話は別です。
自己破産をすると最長10年間ブラックリスト入りするので、信販会社との保証契約は結ぶことができません。
では、信販会社以外の保証会社だとどうなるのかというと、こちらも厳しくなってきます。
これらの保証会社は「一般社団法人 賃貸保証機構 (LGO)」「一般社団法人 全国賃貸保証業協会(LICC)」などにそれぞれ加盟しています。
これらの業者が直接個人の信用情報を開示することはできないのですが、家賃の滞納があったり、自己破産によって未払いのまま退去となったことなどは加盟業者同士の情報共有でバレてしまうことになります。
今住んでいる賃貸物件への債務整理の影響は?
債務整理をすることで、今住んでいる賃貸物件を追い出されるようなことは基本的にありません。
ただ、こちらも債務整理をしたことが間接的に賃貸契約に関わってくることがあります。
保証会社となっている信販会社も債務整理をする場合
クレジットカードの支払い滞納分を任意整理する際に、住んでいる物件の保証会社が同じクレジットカード会社(信販会社)だった場合、債務整理を行うことが保証会社にもすぐにわかってしまいます。
こういったケースでは更新の際に保証契約の更新ができないこともあります。
退去勧告される、更新を拒否される、連帯保証人をつけるように言われる、別の保証会社を紹介されてそちらで再度審査を受けるように言われるなどの対応を求められることがあります。
家賃を滞納している場合
債務整理をしていてもしていなくても、家賃を滞納することで退去を要求されることがあります。
どれくらいの滞納ならOKというルールはありませんが、厳しいことを言うと1日でも延滞は延滞です。
ただ、一般的には3ヶ月~半年程度延滞をすると契約解除予告状が届くことになります。
自己破産をした場合でも家賃はきちんと払っていて、今後も払い続けられるならば賃貸契約への影響はありませんが、家賃を長期間滞納したうえで自己破産をした場合は、「家賃の滞納」が理由となって強制退去となる可能性は高くなります。
家賃の支払いがクレジットカードの場合
賃貸物件の中には不動産会社が指定するクレジットカードで家賃の支払いを行わなければいけないケースがあります。
債務整理をしてブラックリストに載ると、今使っているクレジットカードも使えなくなってしまいます。
クレジットカード会社は、カードの利用に問題がないことを確認する途上与信を定期的に行なっています。
この途上与信でブラックリスト入りしていることがわかると、クレジットカードが突然使えなくなることがあります。
また、途上与信は行われなくても、カード更新時には必ず審査が行われます。このタイミングでもブラックリスト入りしていることが発覚してしまうことになります。
ただ厳密に言うと、指定のクレジットカードで払えなくなったからといって、それだけが理由で貸主が借主を追い出すことはできません。
クレジットカードが使えなくなったことで長期間の滞納が発生したなど別の理由があれば退去を求められることがありますが、指定のクレジットカードが使えなくなっても家賃の滞納がなければ強制退去とすることはできないんです。
ただし、「指定のクレジットカード以外の支払いは受け取らない」と受取拒否をされてしまった場合は要注意です。
なぜならその状態が続くと家賃の未納になってしまうからです。長期間の家賃の未納は退去を求めて良い理由になるので、こういった場合は、債務整理を依頼した弁護士・司法書士に早めに相談してみてください。
債務整理で退去を求められたら引越しをしないといけないの?
賃貸契約をしているマンションを出て行くようにと言われた場合でも、必ずしも従わないといけないわけではありません。
貸主側から賃貸契約を解除するには正当事由が必要なのですが、例えば「別の保証人を用意してもらえなかった」「クレジットカード払いができなくなった」という理由は正当事由にはならないんです。
ただし、貸主からの要求に従わなかった場合は、最終的には裁判を起こされる可能性もあります。
この段階になると色々と面倒なので、早めに弁護士などに相談すべきでしょう。
債務整理をすると引越しができなくなる?
「債務整理をすると賃貸物件の契約ができなくなる」と言われたり、逆に、「債務整理をすると強制退去になる」と言われることがあったり、何が本当のことなのかわからなくなってしまいそうですが、これはどちらも間違いです。
ここまでに説明してきた通り、債務整理をしたことだけが理由で強制退去になることはありませんし、引越しができなくなることもありません。
自己破産の手続き中は居住地が制限される
ただし、自己破産の手続き中は居住地が制限されることになります。
自己破産は本来必要な返済を0円にする非常に重要な手続きなので、債務者は債権者に十分な説明をしなければいけません。
この義務を果たすという観点から、申し立てを行ってから破産手続きが完了するまでは破産法によって居住地の制限が設けられることになるんです。
▼破産法 第37条 破産者の居住に係る制限
第三十七条 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
<引用元>:e-Gov 破産法
自己破産の手続き中に居住地を離れる場合には裁判所の許可(東京地方裁判所の場合は破産管財人の同意)を得る必要があります。
許可なく引越しをすると破産法による義務に違反したということになり免責不許可事由になると判断されることがあります。
ちなみに居住地を離れるというのは引越しだけではなく、2泊以上の宿泊が必要な会社の出張や旅行なども許可なく行うことはできません。
これらの居住地の制限は自己破産の手続きを行なっている間だけなので、手続きが終了すれば引越しも自由にできるようになります。
【まとめ】管理会社(不動産会社)に相談してみるのもオススメ
債務整理と賃貸契約についてご紹介してきました。
債務整理をしても賃貸物件を利用することはできますが、保証会社が信販会社になるケースでは審査に通ることができません。
従来型の連帯保証人をつけるタイプの賃貸契約なら、債務整理後でも問題なく契約ができます。
債務整理をした後の賃貸物件探しは、いかに信販会社が保証会社となっていない物件を探すかが重要になってきますが、近年は保証会社との契約が必要な物件が増えています。
以前は、連帯保証人を頼めないような人が保証会社を使うというイメージだったのですが、保証会社を利用した方がいざというときに確実に滞納家賃を回収できることから、現在は連帯保証人をつけるよりも保証会社の利用が好まれるようになっているんです。
ただ、保証会社がつかない物件を探しても難しい場合があるかもしれませんので、こういったときには、管理会社(不動産会社)に、状況を話してみるのもオススメです。
管理会社は家を借りて欲しいと思っているので、信販会社との契約が必要な物件を外してピックアップしてくれたり、比較的審査が緩い物件など債務整理を行なった方でも審査に通りやすい物件を探してもらうこともできます。
もちろん、毎月のお給料が安定していないなど家賃を滞納しそうな人にはサポートをすることはできませんが、家賃の支払いに問題がなければ家探しに協力してもらえます。
また、債務整理後に引越しをする場合は、毎月確実に支払えるだけの家賃の物件を探すことも重要です。
せっかく理想の家に引越しができても、家賃を滞納してしまうと最悪の場合強制退去となってしまいます。
家賃やスマホ代金など生活に必要で長く使い続けていくものは、なるべく滞納しないように気をつけましょう。
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