債務整理すると官報に掲載される?

「官報」をご存知ですか?「知ってる!」という人よりも「聞いたことがあるようなないような・・・」という人の方が多いと思います。
あまり馴染みのない官報ですが、債務整理をすることで自分の氏名と住所が記載されてしまうことがあるんです。
そもそも官報とはなんなのか、どういった債務整理をすると載ってしまうのかなど、債務整理と官報についてわかりやすくご紹介します。
官報とは?
官報とは国が発行している機関紙のことで、法律、政令、条約などの政府情報を広く伝達する手段として、1883年(明治16年)に創刊されたのが始まりです。
現在も土日祝日(年末年始を含む)を除く平日に官報は発行されていますが、本紙に記載しきれない内容がある場合は号外が発行されることもあります。
・本紙
平日(行政機関の休日以外の日)に毎日発行されます。
・目録
毎月1回発行されます
・号外
本紙に書ききれない内容が記載されています。
政府調達や緊急掲載の必要性があるもの、衆議院、参議院の国会会議録など。
・緊急官報
災害時、非常事態などの有事の際に、緊急の法令公布や告示を行う場合などに発行されます。
官報の発行形態は紙媒体とインターネットがある
官報の発行形態は、紙媒体とインターネット版になります。
紙媒体の官報はどこで読めるの?
紙媒体の官報はA4サイズで、発行日の8時30分に国立印刷局と東京都官報販売所に掲示されます。
また、図書館でも読むことができますし、全国にある官報販売所から申し込むと自宅に配送してもらって定期購読することも可能です。
・1ヶ月の定期購読:1,641円(税込)
・部売り(1部32ページ程度):143円(税込)
※郵送してもらう場合は別途郵送料金がかかります。
最寄りの官報販売所はインターネットで検索することができます。
<参考>:報販売所等一覧
インターネット版官報は無料で閲覧できる
インターネット版官報は、直近30日分を無料で閲覧することができます。
また、平成15年7月15日以降の法律、法令等の報告と平成28年4月1日以降の政府調達の官報情報も無料で閲覧できます。
<参考>:インターネット版官報
官報に記載されている内容とは?
官報には日本政府と府省が国民に広く知らせたい発表、広告、公文などが記載されています。
▼官報に掲載される公文・公告
【公文】政府や各府省などが公布する文書 | 【公告】国、各府省、特殊法人、地方公共団体などの告知 |
・法律・政令・条約 国家の決定事項や外国間での決定事項 ・内閣官房令、府令・省令、規則、告示 ・国会事項 ・人事異動 ・叙位・叙勲・褒意 ・官庁報告 ・資料 |
・入札公告・落札公示・官庁公告 競争入札に関する告知 ・裁判所公告・特殊法人など ・地方公共団体 ・会社その他 |
※内容と掲載量は日々変動しています。
官報がどういうものなのかということについて見てきましたが、次の項目では債務整理と官報の関係性について確認していきましょう。
債務整理によって官報に掲載される情報とは?
債務整理には「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4種類がありますが、このうち「個人再生」と「自己破産」を行うと官報に記載されることになります。
官報の役割に裁判所公告があるのですが、個人再生・自己破産の告知はこれに当たります。
掲載場所は本誌ではなく「号外」の「公告 → 諸事項 → 裁判所 → 破産、免責、再生関係」の欄に、氏名や住所などが記載されることになります。
・事件番号
・住所
・氏名
・官報掲載内容(「債務者について破産手続きを開始する」など)
・宣告決定年月日
・裁判所名
など
個人再生・自己破産によって官報に掲載されるタイミングはいつ?
個人再生と自己破産で官報に掲載されるタイミングは1度だけではなく、自己破産では合計2回、個人再生では3回掲載されることになります。
開始決定後と免責決定後(2回)
・個人再生
開始決定後、書面決議決定後、認可決定後(3回)
そもそも個人情報が官報に掲載されるのはなぜ?
個人再生・自己破産では、債務者の氏名と住所が記載されることになるわけですが、債務整理を行なったことと自分のフルネームと住所が紙面やネットで公開されるのは気持ちの良いものではありません。
最初の方でご紹介した通り、官報は政府の決定事項などを国民に広く告知することを目的としているので、読もうと思えば誰でも読むことができるものです。
そういった文書になぜ個人情報が載ってしまうのか、とても不思議に感じる方もいらっしゃると思います。
債務整理を行うことが官報に告知される理由は、債権者をはじめとした関係者に手続きが行われたことを広く知らせ、意見があれば申し述べができるようにするという目的があります。
個人再生・自己破産は債務者にとっては生活を再建するための手続きですが、債権者にとっては本来返済されるはずのお金が戻ってこなくなる手続きでもあります。
影響力が非常に大きいので、法律に基づいてきちんと手続きが開始されたことを知らせるという意味合いで、申し立て者の氏名と住所を公開しているということになります。
官報を読んでいる人とは?
理由があって官報掲載されるわけですが、破産したことなどが自分の氏名と住所とともに広く知られてしまうと、自分が知っている人にバレてしまうかも・・・と思えてきます。
官報は一般的に広く読まれているものではありませんが、どういう人が読んでいるのかというと、以下のような職業の人があげられます。
・税務署
・個人信用情報機関
・金融関係会社の担当者
・法律事務所の方
・保険会社の担当者
など
官報から債務整理がバレることはほとんどない!
「自己破産をすると官報からバレることがあるから不安」と言われることがありますが、こういった職業の方が家族・親戚・友人にでもいない限り、官報を定期購読して誰かの破産情報をチェックしているという人は非常に少ないはずです。
実際、官報から債務整理をしたことが身近な人に知られてしまうというケースは極めて稀なことなんです。
しかし、上記の職業以外でも、ヤミ金業者が官報を読んでいる可能性も非常に高いということも知っておきましょう。
官報掲載のデメリット!ヤミ金も読んでいる
個人再生・自己破産をすると、官報に氏名と住所が記載され、個人再生をしたのか、自己破産をしたのかもわかるようになっています。
ヤミ金業者は、高い金利でお金を借りてくれる人をいつでも探しています。
高い金利でもお金を借りる人というのは、お金に困っているけど大手の消費者金融や銀行カードローンからは借りられない人、つまりブラックリスト入りしている人ということになります。
個人再生・自己破産をすると5年~10年の間ブラックリスト入りしてしまうので、正規の貸金業者からお金を借りることは非常に困難になります。
ヤミ金業者にとって官報は、労せずお金に困っている人を調べる手段、ブラックリスト入りしている人の氏名と住所を知ることができる手段となってしまうんです。
個人再生・自己破産をした後に「ブラックでも融資できます」などと書かれたダイレクトメールが自宅に送られてきたら、それは官報から情報を得て送られてきた可能性があります。
絶対に連絡をしたり、お金を借りたりしないようにしてください。
「破産者マップ」が問題になったこともあった
現在は閉鎖されていますが、2019年3月ごろに「破産者マップ」というサイトがインターネット上に存在して、大きな騒動になりました。
破産者マップは自己破産をした人の氏名と住所などの個人情報をGoogleマップ上で示したものでした。
Google マップに表示されているピンをクリックすると、事件番号、氏名、裁判所などが表示されるという、なんとも余計なお世話と言わざるを得ない内容でした。
これら破産者マップの情報は、もちろん官報から得たものです。
いくら官報で告知されるからといって、民間で勝手にこういった情報を可視化できるようにするのは倫理観が欠如している、名誉毀損にはならないのか、個人情報の漏洩にはならないのか、などの批判が高まり2019年3月19日には破産者マップが閉鎖されることになりました。
ネット上では批判が高まり社会問題にまで発展して、それから約4日後には破産者マップが閉鎖となったくらい大きな話題を呼び非難されたんです。
現在は官報以外で自己破産をした人の情報を一般人が知るすべはないのですが、官報に個人情報が記載されることで、こういった事件も起こったという事実も一応お知らせしておきます。
<参考>:破産者の氏名や住所を地図上に表示「破産者マップ」に批判の声 -livedoorニュース-
官報に自分の名前と住所が載ってしまうことそのものがデメリットと言えるのですが、こういう特殊なケースを除けば、官報が債務整理を行なった人に与えるリスクはそう大きくはありません。
官報から債務整理がバレる可能性が低い理由
個人再生・自己破産で自分の氏名と住所などが官報に記載されてしまうことを避けることはできませんし、ひとつのデメリットとなってしまうことは事実です。
しかし、官報から家族・親戚・友人・会社の人・近所の人などに債務整理をしたことが知られてしまう可能性は非常に低いんです。
まず、あなたは官報から家族・親戚・友人・会社の人・近所の人の個人再生や自己破産を知ったことがありますか?
答えはおそらくノーだと思います。
それはあなたにとっても同じで、友人が官報からあなたの自己破産を知ってしまう可能性そのものが限りなく低いんです。
もちろん、官報を読まれてしまったら債務整理の事実がバレてしまうことになりますが、そもそも大多数の人が官報を好んで毎日読んではいません。
仕事で情報が必要という人でもない限り、これまでに1度でも官報を読んだことがあるという人の方がごく少数なのではないでしょうか。
官報の閲覧にはお金がかかる
個人再生・自己破産について記載されている部分を無料で読める期間は、直近30日分のインターネット版のみです。
それ以外の購読にはお金がかかりますし、図書館に行ったり自分で取り寄せないと官報を読むことができないので、あなたの知り合いが新聞のように毎朝官報を読むことを日課にしている可能性は圧倒的に低いんです。
官報が個人に与える影響力はその程度なので、「官報から周囲に自己破産がバレる」という心配は無用です。
官報と信用情報機関は関係あるの?
個人再生・自己破産をすると、信用情報機関にも5年~10年間記録が残ることになります。
この記録がある状態をブラックリストと表現しています。
信用情報機関は、官報から情報を集めて内容を記載するのですが、官報と信用情報機関は存在している目的が異なります。
官報は政府や国の決定事項、重要事項などを国民に告知することが目的なので、債務整理についての内容は、裁判所からの告知をいう意味合いで掲載され、特定の業種や個人向けに発行しているものではありません。
信用情報機関みは、クレジットカードの利用履歴、カードローンなどの借り入れの利用履歴、返済履歴、延滞の有無、債務整理の有無などを記録しており、加盟団体は、審査をする際など必要な時に照会できるようになっています。
信用情報機関に記載されている個人再生を閲覧できるのは貸金業者、銀行などの限られた業種の担当者のみとなっています。
どちらにも個人再生・自己破産の情報が載ることになるのですが、そういった情報を取り扱う理由には明確な違いがあります。
なお、官報には個人再生・自己破産の情報しか掲載されませんが、信用情報機関には任意整理・特定調停の情報も掲載されます。
信用情報機関には、4種類すべての債務整理の情報が一定期間載ってしまうという違いもあります。
債務整理(個人再生・自己破産)と官報Q&A
債務整理(個人再生・自己破産)と官報掲載についての疑問点をQ&Aで解説します。
官報掲載を拒否することはできるの?
官報掲載を拒否することはできません。
官報には裁判の内容を記載することが決まっていて、個人再生・自己破産もこれに当たりますので、個人の意思で掲載を拒否することはできないことになっています。
官報に掲載されると生活が変わることがある?
官報は誰でも閲覧できるものである以上、個人再生・自己破産をしたことが親戚や知り合いなどに知られてしまう可能性はゼロではありません。
ただ、繰り返しになりますが、現実には官報から債務整理を行なったことが誰かに知られて周囲に広まってしまう可能性はゼロに近いと言っても良いくらい限りなく低いんです。
ですので、官報に載るからと言って生活が脅かされたり、窮屈になる可能性はとても低いです。
ただ、個人再生と自己破産を行うと、信用情報機関に5年~10年間記録が残るブラックリスト状態になりますので、官報の影響はなくてもブラック入りしていることが生活に影響します。
例えば、クレジットカードが作れなくなる、お金を借りられなくなる、ローンを組めなくなるなどのデメリットがあります。
また、前述の通り官報がヤミ金の目に止まって、DMが送られてくることはありますので、もしそういったものが届いたらすぐに破棄してください。
記載されている電話番号に電話をかけて「これ以上送ってこないでください」などと伝えることも絶対にやめて、無視し続けるのが最も賢明な方法です。
官報の掲載は削除することができるの?
官報への掲載は新聞に掲載されるようなものなので、削除といったことはできません。
インターネット版官報も30日経過すれば閲覧できないようになりますが、それよりも前に削除してもらうことはできません。
官報に載るのは避けたい!どんな方法がある?
個人再生・自己破産をするのであれば、官報掲載を避けることはできません。
どうしても官報に載りたくないという場合は、他の債務整理を検討することになります。
任意整理と特定調停であれば官報に掲載されることはありません。
ただ、任意整理も特定調停も、個人再生・自己破産ほどの借金の減額は望めないので、借金の金額によってはご自身の借金問題解決に向いていないこともあるでしょう。
せっかく債務整理をしても、借金が大きく残ってしまっては意味がありません。
官報に掲載されることは避けられませんが、債務者本人に大きな影響があることはありませんので、あまり不安にならずに必要な債務整理を行うことをおすすめします。
【まとめ】官報から周囲にバレる可能性は低い
債務整理の中でも個人再生と自己破産を行うと官報に掲載されます。
この官報掲載はどうしても避けることはできないのですが、債務整理をしたことが官報から周囲にバレてしまう可能性は圧倒的に低いです。
なぜなら、「官報」という言葉すら知らない人の方が大多数ですし、知っている人でも官報を購読して普段から読み込んでいるという人はほとんどいないから。
それに幅広い方が気軽に読めるインターネット版官報は30日間しか公開されないので、非常にわずかな期間です。
官報から債務整理の事実が親戚や勤務先の人にバレてしまう可能性は本当に低いので、その点は闇雲に不安を感じる必要はありません。
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